冬の九寨溝―四川雑感〔5〕―

2002年7月・2005年6月〔九寨溝・黄龍(1)―四川雑感(2)―〕と夏期でしたので、3度目の九寨溝行として、冬を選びました。当初の予定では2日間をかけてゆっくりと歩きながら巡るつもりでした。ですが、冬季は極めて訪れる人が少ないのか(私が訪れた日の訪問者数は数百人と推量しました。というのは入場時、9時前、にバスは4台しか待機しておらず、12時過ぎに諾日朗観光客センターで昼食をとったとき、先客はわずかで、その後も席には十分な余裕がありましたから)、溝内バスは全て小型であるばかりでなく、事実上、溝内におけるツァーバス化していました。というのは、まず入口からの長海方面行のバスがなく、全て日則溝方面行です。そして、このバスは私が乗ったバスの場合、9時過ぎに出発し、箭竹海までまず行き、ここで下車し散策時間をとった後、再び乗車し、順に熊猫海、五花海、珍珠灘・珍珠灘瀑布とポイントで下車散策し、諾日朗観光客センターでの昼食時間(バイキング33元)をとった後、午後に長海、五彩池、諾日朗瀑布、老虎海・樹正瀑布・樹正群海、盆景灘と下車散策し、16時半前に入口に戻ってきました。途中で、下車も可能ですが、実際は本数が極めて少なくツァーバス化しているため、自由に乗り継ぐことは事実上無理です。したがって、入口で乗車した訪問客全体がいわば即席のツァーグループ化して、最後の行程を除き、同一行動をとったわけです。結局、バスで基本的なポイントは回れたわけです。訪問者が少ないため、事実上専用バスを使ったと同じことになり、シーズンに比べてむしろ時間に無駄がなく有効に最小時間でポイントを巡れたことになります。なお、入場は8時から出来ますが、早く行っても訪問者が少なければ、満席になるまで長くバス内で待つことになりますから、9時前ぐらいがベストでしょう。次に、予定では熊猫海から珍珠灘瀑布までを遊歩道経由で散策するつもりでしたが、冬季は落石などの危険のため遊歩道が閉鎖されていました。また、樹正溝景区は樹正瀑布を除けば、冬季の風景は寂しさがあり、時間をかけて無理に歩くこともなくなりました。以上、二つのことから、もう1日いても当初予定の散策は出来ないし、冬の九寨溝の特色である凍る滝と白雪に覆われた湖は見ることが出来たので、1日で戻ることにしました。ようするに、冬は1日で十分ということです。結果的に、12日(金)に成都を出発し、13日(土)に九寨溝を巡り、14日(日)に成都に戻ってきました。

それでは、氷と雪を基調にした代表スポットの写真を下に載せます。写真1は湖面が氷結し前夜来からの雪などに覆われた白色の熊猫海です。ちょうどこの日11時ごろまでは降雪があり、路面も白くなり、急坂には雪かき部隊が出動していました。その後、太陽が顔を出す天気となりましたが。黒はありませんがまさしくパンダの白でした。

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写真2は上部から見た熊猫海瀑布です。残念なことに写真左手より下る遊歩道が閉鎖されているため、滝の下部から見上げることは出来ませんでした。それでも滝が氷結していることはお分かりでしょう。青白さがこれを現しています。

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写真3は五花海です。五花海は写真をご覧のように氷結はしません。それでも後方の山の道路斜面が白く覆われ、それが湖面に反射しているのがお分かりでしょう。ともかく五花海の水は透明で冬でも青さの美しさを湛えています。

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写真4は珍珠灘瀑布です。珍珠灘から滝横の遊歩道を下って滝の下に出てきたのです。完全に氷結はしていませんが、逆に流れ落ちる水・氷結した流れ・積もる雪の3者のバランスが一つの絵を作っています。これは幅約200mある滝のほぼ中央部です。

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写真5は長海です。ここも熊猫海と同様に湖面が雪で覆い尽くされています。山も雪に染まり全体が白い世界となっています。なんといっても九寨溝最高標高の湖です。

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写真6は長海を少し下ったところにある五彩池です。逆に写真をご覧のように、岸辺は白く雪で囲まれているのに、まったく氷結せず、雪も積もっていません。不思議なことです。それでもこの池の群青を主体とした微妙な色は来るたびにその時の違った表情を見せて(2005年6月の時と比較してください)、いつ来ても魅せられます。

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写真7は諾日朗瀑布です。中国最大の幅約320mある諾日朗瀑布はとても全景を収めることは出来ません。これは右側から中央・左を撮ったものです。氷結部分と流れ落ちる部分がお分かりでしょうか。極めて寒い日が続くと全面氷結するそうです(この日のホテルでの表示の九寨溝の最低気温は零下7度)。

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最後の写真8は樹正瀑布です。ここは老虎海から遊歩道を下ってきたものです。続いて樹正群海へと歩きます。写真はほぼ滝の中央正面からのものです。中央の氷結・雪部分は何かの動物に見えるでしょうか、皆さん想像してください。

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以上で写真は終わりますが、これらはフォト「九寨溝・黄龍」から代表として選んだものですから、あとはフォトの方をご覧ください。

今回は、ツァーではなく自由な個人旅行として行きました。当初は3泊4日で、九寨溝巡り歩きを2日間かけてやる予定でしたが、前述したように1日で切り上げ、結果的に2泊3日の旅行になりました。往復は長距離バスを使い、ホテルは事前に旅行社で予約をしておきました。

まず、バスの方ですが、成都(新南門)から九寨溝(九通賓館)は121元、九寨溝から成都は118元で、これに保険料1元が加わります。所要時間は10時間となっていますが、実際には11時間以上見ておいた方がよいでしょう。実際、8時発(九寨溝発も同時刻)のが市内渋滞があったにせよ、九寨溝には19時半に入りました。2時間程度に1回はトイレ休憩(トイレはもちろん個室ではない仕切りのある中国式ですが、基本的に水洗式で、以前のイメージの汚いトイレということはなく、かなり衛生的なっています。これは冬場で利用者が少ないせいもありますが)があります。もちろん昼食休憩(茂県内)もありますが、高くて(料理1品10元以上はします)不味いと考える向きは自分で食料を用意なされるといいでしょう。なお、往復とも運転手は2人で適宜に交代していました。ところで、茶店子バスセンター(市西北、三還路外)発の方が安いですが、車両が普通のもので、場所も不便ですから、お勧めできません。

なお、成都発の各地へのバスの出発時間と売れ行き状況について、検索できるサイトがあります。『成都公众出行服务网―客运服务』(http://www.cdgzcx.com/sceneInf.do?type=jttd)で、検索欄に目的地を入力して検索すれば、1週間分の出発時刻・バスターミナル・売れ行き状況が一覧できます。ただし、中国の簡体字は日本の通用漢字で入力すると不明で検索できません。でも、他に類似地名がなければ最後の字は入力しなくとも検索できます。「九寨溝」は本来「九寨沟」ですが、「九寨」で出てきます。

ホテルはシーズンオフのため、営業していないところも多く、事前に予約しておいた方がよいと思います。私の場合、知り合いの旅行社で予約したところ、1泊朝食付100元で、金龍漁港賓館(4星級)に泊まりました。ただし、夕食をホテル内レストランでするようにとのことで、これは個人のセットメニュー(3菜1湯)で、同行の院生からも不味くて高い(24元)と不評でしたが、ホテル周辺には営業しているような食堂類は見あたらず。しょうがないところでした。このホテルは300室以上ある大きなもので、バスタブ(TOTO製)も広く深くふんだんに熱い湯が出るなど、ハード面では快適に過ごせます。ホテルは九寨溝入口の手前側にあり、タクシーで9元の距離ですから、歩くには遠いと思います。成都からのバスの場合、運転手に事前に告げておけば、ホテル前で止めてくれて下車できます。なお、タクシーは早朝からホテル前の道路上で客待ちをしています。

最後に、飛行機利用の場合ですが、現在は日3便(中国国際航空朝・午後各1便、四川航空午前1便)しか運航しておらず、天候不良(成都双流空港は朝に霧が多く、遅延が珍しくありません。九寨溝・黄龍空港は3500mの高地にあるため、夏でも天候不順による遅延は珍しくありません)による遅延・欠航のリスクがありますから、必ずしも予定通りに行くとは限らず、時間の節約になるかは天候次第となりかねません。それに、個人で行く場合は空港・九寨溝間の連絡に不便をする場合がないとはいえません。ですから、ツァーを利用した方が安心だし、料金的にも安上がりになります。

(2007.01.15)

 

追記  コメントへのお答えとして、九寨溝の整備された一例として、公衆トイレについてコメントしました。百聞一見にしかずといいますから、これを補う意味で、フォト「九寨溝・黄龍」に熊猫海の公衆トイレ個室内の写真をアップしておきました。(2007年1月17日)

 

〔追々記〕 フォトアルバム「四川・九寨溝と黄龍」は、https://1drv.ms/f/s!AruGzfkJTqxngpICIx9_FH2hulHXCwです。

(2011.09.30)

kanazawa45 について

中国に長年にわたり在住中で、現在、2001年秋より、四川省成都市の西南交通大学外国語学院日語系で、教鞭を執っています。 専門は日本中世史(鎌倉)で、歴史関係と中国関係(成都を中心に)のことを主としていきます。
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冬の九寨溝―四川雑感〔5〕― への8件のフィードバック

  1. PEIZHI より:

    お疲れ様でした。記事と写真を拝見させていただきました。
    私は10年前の1996年のなつばに一度九寨溝を訪れましたが、正太さんが写した写真を拝見すると、冬の九寨溝にも別の趣きがありますね。(^-^)
    私にとって、10年前の九寨溝というのは、観光施設がちゃんと整備されておらず、ハイシーズンのせいかどこに行っても人だらけなので、風景がきれい以外は本当に最悪な「タビ」でした。
    が、正太さんの記事から、昔に比べずいぶんよくなってきたように見えます。できるものなら、今年の春休みにもう一度行ってみたいなあと思っています。
    記事の続きを楽しみにしております(笑)。
     

  2. 正大 より:

    Akiraの森さん、確かに、現在の九寨溝は中国の中でも整備された地となっています。一例として、トイレをあげます。日本人一般は中国の公衆トイレが清潔でなく個室でもないと思っています。しかし、九寨溝のトイレは違います。環境を第一に考えた設備となっています。もちろん扉鍵付の個室です。大きい方をいうと、洋式便座から内部を覆っているカバーが1回使用すると、排泄物を包み込んで、そのまま下へとおちます。そして新しいカバーが便座から内部を覆います。つまり1回ごとの使い捨てになっていますから、便座カバーは常に新しいのになります。それにこの行程には水を使用しません。排泄物を包み込んだカバーは下部に貯められて、それを後で回収して、九寨溝外の処理施設で処理されるようになっています。この一連の処理工程は九寨溝の自然、とりわけ水を守るためのものです。実はそのトイレ個室内部の写真も撮っていたのです。後で、フォトに追加アップしておきますからご覧ください。(シーズンには既設の公衆トイレだけは不足しますから、移動トイレ車が動員さ れます)ところで、九寨溝に春休み行かれたいとのことですが、もし黄龍も併せてとなると、適当ではありません。黄龍へは途中約4000mの峠越えの道があり、冬季は積雪・氷結で道路が閉鎖されていけません(黄龍自体は冬季も開いています)。3月下旬ぐらいから通行可能になりますが、5月に入っても降雪があるように、4月でも降雪・氷結で通行不可になります。それに雪解け前ですから、水量に乏しく、多くの池に水がなく、流れがないところもあり、真の姿とはいえません(水量からいうと、雪解け以降の6月以降となります)。この点をお含みおきの上で計画なされるといいでしょう。

  3. PEIZHI より:

    正大さん、ご返事ありがとうございます。
    今回の春休みの一時帰国ですが、3月中旬ごろにまた日本に戻りますので、恐らく黄龍への道が復旧するまでは待たれないと思います。
    今年の関東地方が、温暖化のせいか、まだ大雪が一回も降っていません。私は最近とても雪が恋しくなっています(笑)。

  4. 正大 より:

    Akiraの森さん、3月中旬までなら、九寨溝は氷と雪が見られると思います。ツァーの方がたぶん安いでしょうが、牟尼溝が入り1日余計にかかり、これは見なくてもよいですから、自由に九寨溝だけ行かれた方がいいかもしれません。どうぞ、春節休みを故郷でお楽しみを。

  5. Tohru より:

    こんにちは^^ブログの書き込みから来ました。
    「冬の九賽溝」大変参考になります!!
    他の写真も時間がある時にゆっくり拝見させてもらいます。

  6. 正大 より:

    Tohruさん、お暇なときでも、九寨溝などの写真をご覧ください。こちら成都でも、10月に入ってからはほぼ雨模様で、太陽が姿を現しません。

  7. 雪敏 より:

    写真を拝見しました。冬の九寨溝はほんとうにきれいですね!九寨溝にいきたい気分になりました。もしお金と余裕があったら、ぜひ一度観光にいきます。

  8. 正大 より:

    点点さん、こんばんは。寒さ対策さえすれば、冬の九寨溝は、観光客は少なくて、焦ることなく、ゆっくりと写真も撮れ、いいものです。ただし、ホテルは大半が休業中と、中級以下のホテルは暖房がだめで寒いことでしょうか。

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