外務省の渡航情報は四川省の地震復興への阻害要因

 『旅行業界 最新情報 トラベルビジョン2008年9月9日付「JATA・中国国家観光局、四川省渡航情報引き下げを外務省に要望-見直し着手」(http://www.travelvision.jp/modules/news1/article.php?storyid=38002&PHPSESSID=6ee5347357868e331dcf579c79497aa2記事に、次のように書かれています。

 

 日本旅行業協会(JATA)事務局長の奥山隆哉氏と中国国家観光局(東京)首席代表の范巨霊氏ら6名が98日外務省を訪れ、四川省の視察結果を報告、渡航情報の引き下げを要望した。現在のレベルは「渡航の是非を検討してください」で、旅行会社によっては社内規定により募集型企画旅行の募集を中止せざるを得ない。范氏によると、「視察の結果、地震の影響はほとんどなく、観光には問題なかったことを説明」し、1日も早く引き下げられるよう要請。外務省海外邦人安全課からは、「情報を参考に、見直しに着手する」旨の回答を得られたという。外務省は今後、北京の在中国日本大使館と重慶の総領事館を通して情報を収集し、引き下げを検討する方針だ。

 在中国日本大使館によると、これまで中国各地から観光客受け入れ再開の知らせはあったものの、「現時点で省政府の外国との窓口である外事弁公室に要請しても正式な通知を得られていないため、安全第一の立場から見切り発車もできない」状態にある。これについて范氏は、「84日に外事弁公室の上部組織である四川省人民政府が再開を発表、6日から実際に再開している」とし、外務省にも同様の理解を求める。

 

 5月12日の四川汶川大地震に伴う四川省渡航情報(渡航の是非を検討してください)が継続されている理由を、本記事後段での在中国日本大使館の弁明をみると、四川省旅游(観光)局が四川省人民政府の裁可を受けて、8月6日からの九寨溝・黄龍へのツァー募集解除の記者発表を行い、地震震源地域を除く四川省の観光地の安全宣言を4日に行ったことを、一民間人である私が5日には知りえている(中国の国内サイトでニュースとして掲載されました)のに、大使館が知らなかったことになります。ただ、たんに四川省外事弁公室への問い合わせで、独自に情報収集をしていなかったことを如実に示しています。これではアンテナの役割を果たせません。

 これに加えて、四川省の面積が48万5千k㎡と日本全土の1.3倍もあるのに、いかにM8の大地震とはいえ、省全域に「渡航の是非を検討してください」と注意喚起を出して、それも地震直後ならまだしも、すでに4月近くなるのにそのまま継続中とは、如何に情報収集・分析力と想像力が欠如しているかを示しています。考えてみてください、そのことは阪神大地震の時、外国から日本全土への「渡航の是非を検討してください」という情報を出されたら、日本人および政府はどう思いますか。おかしいと思うでしょうし、その国は何もわかっていないとも思うでしょう。外務省の海外安全情報サイトは中国人、いや四川人でも見ることはできるのです。どうもそのような意識は外務省にはないようです。

 本記事の前段落にもあるように、外務省の渡航情報発令の有無がツァー募集に直結している旅行社(これも自主的に判断できず、責任を他に転嫁する情けない社ですが)もあり、まともな情報収集と分析に欠けた外務省の渡航情報はまさしく海外旅行への阻害要因といえるでしょう。四川省は観光地に恵まれ、観光も産業の大きな柱です。地震により本年は観光客が激減したのです。例えば、九寨溝では、5月12日の四川汶川大地震後、わずか27280人(5月13日~7月31日)と、前年に比して76万人も観光客が減少しました。現在でも、日3千人を超えることはありません。当地は、今は観光で生計を立てているのです。四川省の復興には早く観光客が戻ってほしいのです。日本でも、岩手・宮城地震で温泉客のキャンセルが相次いで、風評被害として地元が困惑したことを御承知でしょう。四川省も同じです。外国人観光客中、日本人が第1位です。みなさん、安心して四川省においでください。そのことが何よりもの地震復興のお手伝いになるのです。

(2008.09.09)

追記  1017日、ようやく外務省が四川省への渡航情報(危険情報)を一部引き下げました。次の通りです。

 

四川省の上記以外の地域:「十分注意してください。」(引き下げ)

 

上記とは、「四川省の甘孜チベット族自治州及びアバチベット族・チャン族自治州(九寨溝、黄龍の景勝地を除く)」のことで、この地域は「渡航の是非を検討してください。」(継続)のままです。上述の日本旅行業協会(JATA)の申し入れから、1月以上を要しました。すでに秋の観光期の盛りを過ぎ(特に九寨溝・黄龍)、出し遅れの証文みたいなものです。(20081018日)

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kanazawa45 について

中国に長年にわたり在住中で、現在、2001年秋より、四川省成都市の西南交通大学外国語学院日語系で、教鞭を執っています。 専門は日本中世史(鎌倉)で、歴史関係と中国関係(成都を中心に)のことを主としていきます。
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外務省の渡航情報は四川省の地震復興への阻害要因 への2件のフィードバック

  1. xiong2_gongzi より:

    私もこのニュース見ました。四川省に早く日本の観光客が戻るといいですね。
    それにしても日本政府、いかにもお役所的対応です。
    (xiong2)

  2. 正大 より:

    xiong2さん、こんばんは。中国の官僚組織が日本以上に縦割りなことも理解できないほど、外務省の認識度は幼稚園児以下です。

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