「神鳥谷曲輪」城館遺跡―歴史雑感〔8〕―

 

2007年8月11日(土)10時から栃木県小山市神鳥谷字曲輪の「神鳥谷曲輪(ひととのやくるわ)現地説明会」が開かれました。同遺跡地内の開発に伴う発掘現況の説明会です。当日は夏の晴天で猛暑の中、50名を超える参加者があり、小山市教育委員会秋山隆雄氏から、遺跡の発掘成果と出土品に関して説明がありました。

当遺跡は中世の城館遺跡として知られており、下野国の平安時代以来の豪族武士小山氏関係の城館と考えられております。当遺跡はJR小山駅の南900mほどの所、東北本線で分断されて東西約160m・南北約200mの方形に土塁を巡らし、この回りに20m程度の堀で囲まれていたと推定されています。典型的な中世武士の方形単郭館と考えられているわけです。

今回の発掘地は本館の中央部と推定される所で、写真1は発掘現場全景を南側から北に向けて撮ったものです。右側(東)に東北新幹線の高架線が走っているのがお分かりでしょう。後方左に見えるビルが小山パレスホテルで、この前を東西に走っている道路辺が本館の北限と推定されています。発掘現場は南側に掘立て柱跡などが希少で、中央部に大井戸跡があり、後方に多数の建物柱跡などが見られます。ですから、本館の南側部分は弓場などの平場とし、中央に中心の井戸を配して、この東から北側に館の主要建物があったと私は推察します。

Unicode

写真2はその大井戸跡(14号井戸)で、秋山氏が説明しているところです。本井戸跡は外径約4mの円形の中央に、さらに約1mの方形に粘土層まで掘り、この方形を木枠(写真で、方形の下部に見えます)で押さえて、各面を5枚の立て板で覆い、この木枠と立て板を何段(7段と推定)か重ね、井戸を確保した構造となっており、他の掘切の井戸(約1m程度)とは構造も大きさも段違いで、まさしく館の中心井戸と推定されるものです。現在でも井戸跡地には地下水が流れ、このため木枠などが朽ちることなく保存されていたわけです。なお、井戸内からは青磁片などが出土しています。

Unicode

写真3は発掘現場東北角より見た道路跡です。ちょうど東南方向へ走っています。道路幅は約4mで、写真に見るようにこの両側に溝を切っていますし、道路全体は地表面から掘り下げられており、本館の南西約1kmの小山市外城・神鳥谷境辺で発掘された道路跡(奧大道と推定)と、これらの構造や作りは同じです。ただ道路幅が半分であることから、その支道と推定されています。ですから、この方向から、本館の南南東約4kmの小山一族の伝塚田館(小山市塚崎字八反田)へと通じる道と考えてもいいのではないかと私は思います。また、写真を見ればお分かりのように、道路面には建物柱跡や井戸跡が多数あり、これらは道路の後の時期に掘られたもので、より新しい時代のもので、それに当道路面からは多量のかわらけ類が出土し、これらの制作年代は14世紀後半と考えられています。これらのことから、この道路は14世前半の鎌倉時代後半までには建設されていたと推定されています。

Unicode

以上の外、出土品として、井戸木枠・立て板片、かわらけ・青磁片・陶器片・漆器片・将棋駒などが展示されていました。本遺跡の発掘状況と出土品を総合的に判断すると、14世紀(中期以降か)に築かれた武家館と考えるのが本時点では妥当ではないかというのが発掘側の見解です。なお、現在井戸の木枠の伐採年代測定に出しているとのことです。

写真4は、写真3の左端奧に東北本線の向こうに見える緑の部分、すなわち本館遺構で地表に唯一現存する土塁跡を、東側から撮ったものです。写真に見るように、1982(昭和57)年10月1日建設の小山市による「史跡曲輪館跡」の碑が建てられて史跡であることを示しています。

Unicode

(2007.08.12)

広告

kanazawa45 について

中国に長年にわたり在住中で、現在、2001年秋より、四川省成都市の西南交通大学外国語学院日語系で、教鞭を執っています。 専門は日本中世史(鎌倉)で、歴史関係と中国関係(成都を中心に)のことを主としていきます。
カテゴリー: 日本中世史 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中