今学期の担当課目

9月12日から西南交通大学は20052006年度の前期学期が開始されました。すでに第3週に入っています。そこで、本学外国語学院日語系(日本語学科)での私の担当課目について述べることで、中国の大学のおける日本語専攻の一端を紹介したいと思います。

今学期の担当課目をまず示します。

1.日本語学概説―大学院1年

2.日文報刊閲読(日本新聞雑誌閲読)―大学本科4年

3.商務函電写作(ビジネス電子メール作文)―大学本科4年

4.日本文学概論―大学本科4年

5.日本経済与貿易(日本経済・貿易)―大学本科4年

6.写作2(作文2)―大学本科3年

7.写作(作文)―成人教育専科3年

以上の7課目で、各週1コマです。

院生1年の基礎課目である「日本語学概説」は、日本の大学での言語専攻の学部生レベルのものとして、『概説日本語学』1995年明治書院をテキストとして講義形式で行います(本来ならゼミ形式を行いたいのですが、資料不足などにより不可)。毎週1章を基本進度として、11月末までに全巻読了予定です。次いで、特論として、石川九楊『二重国家・日本1999NHKブックスをテキストに、その第2・3章を講義します。日本語・中国語ともに漢字という文字を使用する言語なので、文字言語としての両国語を理解するためです。

4年生は2が専門必須で3~5の3課目が専門選択です。「日文報刊閲読」は、基本は日本の新聞の読解ためのものですから、最初に日本の新聞に関する概況(種類・特色・紙面・新聞界など)を講義してから、実際の新聞を題材にして授業を進めていきます。原則的に『朝日新聞』の一面・社会面トップ記事(国際記事は除く)をそのままコピーしてテキストとします。見出し・リードはこちらで解説しますが、本文は段落毎に学生に読ませ、かつ質問し内容の理解度を見ます。もちろん解説もします。基本とするのは、文の単なる読解力ではなく、情報の分析のための記事内容理解です。あくまでも、新聞も情報収集の一手段として捉えているわけです。

「商務函電写作」はもともと「写作3」(3年後期)に続くビジネス作文でしたが、卒業生(主に西安交通大学)の私への電子メールが形式など不備がかなりある(例えば、タイトルの付け方)ので、私がその中に電子メールを入れたため、それに特化して模様替えしたものです。『ビジネスマンのための電子メール作法56』(『日経IT21200112月付録)を一応テキストにしますが、これは参考ということになります。最初にパソコン使用の基本マナーとして、セキュリティーの基本を講義します。それから電子メールの基本を説明した後、テキストを参考として、ビジネスメールの発信・受信そして文章と説明していきます。この際には、私のノートパソコンを教室に持ち込み、実際の画面・操作を学生に見せます。残念ながら教室には拡大用の器具がないので不便です。12月には、卒業論文の関係があるので、斉藤孝『学術論文の技法〔第2版〕』1998年日本エディタースクール出版部を題材として、卒論作成の手順を講義します。この時、論文作成のためのWordの操作方法(タブ・脚注・目次作成など)を若干説明します。

「日本文学概論」は最初の6週程度を日本文学史(前近代と近代・現代を各3周程度)とし、私が以前作成した『日本文学史ノート』をテキストとして講義します。次いで、作品鑑賞として、川端康成「伊豆の踊子」の文庫本コピーをテキストに、毎回4頁程度読みます。その際、段落毎を原則として、学生に読ませた後、質問を受け、それから解説をします。本作を選んだのは、学期終了までに読了できるものであること、青春小説の代表作であることなどからです。

「日本経済与貿易」は、宮崎勇本庄真『日本経済図説第三版』2001年岩波新書を題材に、11月末まで1コマ1章のペースで日本経済の概観を講義をします。最後の12月は橋本寿朗『戦後の日本経済』1995年岩波新書のⅢを題材に、高度成長、とりわけその要因に関して特論を行います。

「写作2」および「写作」は同じ内容の授業となります。テキストは『日本語作文Ⅱ』1988年専門教育出版です。卒業後の社会人としての文章作成を見通して、本作分は事実文を基本としています。明解で簡潔な文章です。すなわち、一度読めば理解できる文章を基本とします。最初の時間は自由課題で作文を書いてもらいます。これは手慣らしです。次いで、テキストから順に課題の課を選び、その課にある関連語句などを解説しますが、少し古いので、現在のことも加えます。そして、若干の質問をします。最後に具体的な課題を説明し、翌週までの宿題とします。例えば、「図書館」ならば、「本大学図書館の書籍貸出し手順」という具合です。字数は8001000字程度とします。翌週は前に出した作文に評価と誤謬訂正を付して返すとともに、時間の前半でその総体的な解説を行います。後半は、本多勝一『日本語の作文技術』1982年朝日文庫などを題材に、明解で簡潔な文章を書くための講義を行います。以下この繰り返しとなります。

以上が私の担当している課目の簡単な紹介です。

 なお、成人教育とは、大学統一試験に合格し入学する学部生とは別に、高校卒業レベルの社会人を対象として大学が独自に募集するもので、学部相当の履修課程があり、授業料以下自費負担となり、課程修了後、国家認定試験に合格すると学歴としての大学卒業資格が得られるものです。また、本科は日本の学部生に相当し、4~6年制で、専科は短大に相当し、2~3年制です。

(2005.09.27)

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kanazawa45 について

中国に長年にわたり在住中で、現在、2001年秋より、四川省成都市の西南交通大学外国語学院日語系で、教鞭を執っています。 専門は日本中世史(鎌倉)で、歴史関係と中国関係(成都を中心に)のことを主としていきます。
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今学期の担当課目 への4件のフィードバック

  1. shiota より:

    中国の大学の日本語教師は何でも屋さんなんですね。経済専攻ではない先生でも、「日本経済と貿易」を担当させられるとは恐れ入りました。なるほど、道理で中国の大学の日本語学部卒人材の修めた日本語能力と企業が求める日本語能力のギャップが甚だしく乖離している原因がよくわかりました。これは実際にある在中日本企業の方とお話していて指摘を受けたことです。実際に、中国の大学の日本語学部卒でも知識はあるのだが、実践的には全然使い物にならず、採用後、社内で一から実践的な日本語を教える必要があるとのことです。そのニッチを捕らえた日本語人材に対する再教育的日本語教育ビジネスへの参入がここ数年盛んになっています。日本語学部卒の人材のすべてが日本語の研究者や教師になるわけではなく、逆にほとんどが一般企業へ就職するのです。そういった彼らに必要とされているのは、日本語についての深遠なる知識ではなく、日本語の実用的運用力です。ですから、彼らの実用的運用力を鍛えられるような科目をもっと取り入れるべきでしょう。そこで、日本語の運用力を特に音声面で鍛えてあげるのはネイティブの日本語教師の一番大切な任務といえます。すなわち、ネイティブである外国人教師が担当する科目は音声・オーラル・コミュニケーション重視であるべきです。たとえ、ネイティブの日本人教師が知識提供の一方通行文字型講義を行っても決して彼らの運用力を高めることにはなりません。知識提供型の一方通行文字型講義は中国人教師に委ねるべき任務です。外国語の文法や諸知識は母国語で学んだ方が生産性が高いというのは外国語教育での常識ですから。ですから、例えば、企業でビジネスの経験があり、中国語が堪能でオーラル・コミュニケーションを重視した講義ができるような日本人を教師として彼らの運用力を高めてあげるべきです。また、外国語は所詮道具ですから、実際に運用できなければいくら知識を持っていても意味がありません。パソコンの知識はあっても実際に使えなければ意味がないのと同じです。ですから、インプットも大切ですが、アウトプットのほうが何倍も大切なのが外国語教育といえます。したがって、ネイティブである外国人教師は、特に音声面においてのアウトプット&オーラル・コミュニケーション力向上に利用してこそ意味があると思います。ですから、作文の添削は別として、上記の1~5の科目は本来中国人教師が中国語で講義して初めて効果のある科目だといえます。1~5などの科目を担当する日本人教師が100%中国語で講義をするならともかく日本語で1~5などの講義をしても学生の理解度や学生の知識習得の生産性は低いと思われます。しかし、1~5などの科目をまともに講義できる中国人教師はほとんどいないので日本人教師へ押し付けられているというのが現状でしょうか。大学卒の就職難は中国でも相当なものだと聞いています。彼らの日本語の運用力向上を重視した教育課程により彼らの就職力を少しでも高めてあげることが必要ではないかと思います。

  2. 正大 より:

    ちょっと一言さん、長文のコメントご苦労様です。中国の日本語教育への疑問や提言など、貴重なお話と存じます。本来ならば、これに対する私の意見を述べるべきでしょうが、話が多々に及び、なにぶん直ぐに纏めることができません。まことに相すみませんが、後日を期すということでご勘弁願います。ただ、教育には教養的なものと実用的なものとの二面がありますが、大学学部の教育の本質は教養的なものであると、私は考えており、そのように実践してきました。

  3. より:

    教育には教養的なものと実用的なものとの二面がありますが、大学学部の教育の本質は教養的なものであると、私は考えており、そのように実践してきました。と金沢先生は言ったことに私は大賛成です。ちょっと一言さんは書いていることは確かに社会にありますけど、日本語卒の就職難というのはビジネス用実用な知識がたりないのは原因にならないと思い込んでいます。基本知識なく、ただ日本で何年間学んだ日本語は確かにビジネス用で、hearing , oral abiltiyもぜんぜん問題ないです。しかし、基本教育と教養を整備していない方だったら、結局上に上げるのはなかなか難のは確かな現状です。ですから、学校は学校、教養と能力の元である基本知識は所謂ビジネス用知識よりもっと大切なものだと思い込んでいます。学校教育の基本知識と所謂知識とは砂と建物の関係だと思います。金沢先生、がんばってくださいね。ずっと見ていますから。湖北大学の2年間有難うございました。

  4. 正大 より:

    doraさん、ありがとう。

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